ホテルの内部業務監査機能

昨夜、下町へ、古くからの友人と食事に行った。
その店の昔から腕の良い料理人、こだわりを感じる一言があった。
「築地での仕入れ、各々の仲買人は扱う鮮魚にもランクがあり、知人に紹介されても、異なる仲買から仕入れることができない。」
それをしてしまうと、求める品質の鮮魚を入手することができなくなる、ということの様だった。

この柳カレイも肉厚かつすっきりした旨さだった。
しかも、添えもの、刺身のツマに使う大根の皮を加工したもの、これもピリット感があり、格別。
つまり、ツマもカット野菜を買ってくるのではなく、大根から包丁で切りだしている、ということ。





ところで、、、、
最近、某ホテルで、内部業務監査手法を議論する機会を得た。
学生時代、『会計監査論』を研究したこともあり、興味ある分野。

約30年前にホテルPMSを構築した経験を踏まえ、チェックポイントをあげていった。
手作業時代のチェックポイントと、ホテルPMSが導入された現在、それは大きく異なる
手作業時代は、段階的に集計表等を作成するため、段階毎にチェックが入る。
このため、間違い・不正は、早期に発見することが可能だった。


毎日の客室収入(売上)を例に挙げて、現況を説明しよう。
手作業時代:
深夜の締め作業、フロントが作成するルームカウントシートと、フロント会計のNCR42号機から打ち出されてくる客室売上との照合が大きなヤマ、1回で『御明算』を得ることがフロント会計のプライドだった。
また、フロントとフロント会計に分かれ、相互チェックが実施され、事前チェックされた予約内容と会計で入力した数値に間違いがあれば、そこで発見することができた。
承認された割引も予約カードに添付されている承認票で確認することも可能だった。


PMS導入済:
多くのホテルがフロントとフロント会計をひとつにしたため、相互チェック機能が消滅した
客室売上はPMSが自動的に集計してくるが、これをどの様にチェックしているのか?

ヒアリングしてみると、そのチェックがなされていないことがわかった。
なぜ?
・ネット販売シェアが高くなり、客室販売レートが多岐にわたるため、チェックしきれない
・配員も少なく、チェックする時間も乏しいため、予約データを信用することにしている



Discount Policy(客室販売時のルール)を設定していても、その運用がすでに死語となっているケースが多いと感じる。
以前、友人に頼まれ、知り合いのホテルに「少し安くしてくれない?!」と頼んだ時、「ネットのいちばん安いレートで予約を入れて欲しい。そうでないと、Discount Apprication Sheetを書かなければならないから。」と言われたことがあった。
つまり、ルールより低額のレートを状況に応じて提供している、ということ。


導入が進むイールドマネジメント、現場ではこの様なことが常態化している、ということだろう。
悪用しようと思えば簡単にできるが、このチェックがなされていないことになる。
システム化が進み、予約カードを作成することも省略するケースも多いため、事後トレースが困難となっている。


稼働した客室にからむ業務、旅行代理店からの送客には送客手数料の集計客室清掃を外部委託している場合は請求に対する確認業務、等々、費用が発生する様々な付帯業務がある。
これらのチェックはどの様に成されているのか??


議論の過程で、ノーチェックの様々なケースがあぶりだされ、先方は驚いていた。
PMS導入による新たな内部統制を構築する必要性が認識できたことだけでも、進歩ということだろう。
この現象、ホテル業務全体に言えることであり、雇用形態の変化(ロイヤリティの低下)、PMSのさらなる進化、ホテル運営の現場を知らない投資家による運営効率の過度な追求、という現況下、きちんと考えないと、どこかで躓くことになる。
既に、食材虚偽表示事案でも、問題は顕在化しているが、のど元過ぎれば・・・、の状態になっていることに強く危機を感じている。。。。


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