やはり、基本が大事

今日の日経新聞「私の課長時代」、帝国ホテルの小林社長が掲載されていた。
駆け出しは客室係(ルームボーイとも言った)、早い話が、客室清掃係。
「バスタブからは下側の汚れも見える」という大先輩の言葉。
本当に重い言葉だと感じるし、若い時にその様な薫陶を受け、しかも、社長になった今でも大事に持っていることが素晴らしい。
このような社長のいるホテル、社員は基本を学ぶことができるし、基本をわかっているから、正しい応用も可能となる
小林社長の奥様とは、一度ゴルフでご一緒したことがあるが、やはり、素晴らしい女性だった。


今、北の大地で総支配人をしている友人のS君。
新卒入社は、日本のホテル学校といわれた、永田町のHホテル。(今はなく、新ビルが跡地に建設中。)
駆け出しは客室係。
彼は、客室内の便器清掃のエピソードを楽しそうに話をしていた。
やはり、同様の内容だったが、自分がこの業界に入った頃だから、鮮明に覚えている。
掃除が楽しい、ということではなく、自分が属する業界の基本を体で学んだことが誇り、と感じた。
この話、その後も、酒を一緒に飲みながら、少なくとも5回は同じことを聞いた、いや聞かされた・・・・
で、今の現場重視のS君スタイルがある。


意識してHホテルの様子を、趣味も兼ねて継続観察。
地下に「李白」というバーがあり、良く通った。
ホテル内のバーでは、帝国ホテル「オールド・インペリアルバー」とこの「李白」が秀逸だと思っていた。
酒を飲むとトイレをよく使うこととなる。
清掃頻度も高く、ベーシンの拭き掃除、ペーパータオルの片づけ、いつもきちんとしていた。
しかも、便器の金具、ゆるみも曇りもない、清掃が本当に行き届いていた。
S君の言うとおりだな、と感心してみていた。

やはり、こういったことが基本だと思う。


しかしながら、ブランド変更があり、運営主体も変わった。
しばらくして、トイレ便器の金具のゆるみ、曇りを感じる様になった頃、「李白」は模様替え、サービスの人達も、チェーン内Gホテルの閉鎖に伴い次第に入れ替わり。
結果として、ごく普通のバーになってしまったため、通うことを止した。


この事例で、ブランドによるホテル運営品質の違いを体験したことは、その後のホテル運営に対する見方に大きな影響を与えた。
継続的な客観的観察は必須であり、このことにより変化も見えてくる


大阪の現場にいた頃、1年超、施設管理の仕事を経験したことがある。
開業後1年半程度経過した時期であり、ホテルは想定以上の盛況、施設の傷みもあちこちで始まっていた。
現場からは、毎日なんらかの補修等を要請する「修繕依頼書」なるものが上がってくる。
客室係からは、毎日、清掃の途中で発見した不具合部分への対応要請。
客室係、QC活動の成果もあり、自ホテルの品質管理にもえていた。
建築系は自分、設備系はN君とで、手分けして対応。
この経験を通じて、初期対応の必要性を痛感した。
盛況とブランドポジションアップをねらう経営の判断もあり、改修と同時にグレードを上げていった。
補修から、第1期改修迄、経験することができたことは財産となっている。
施工した竹中工務店の対応にも感謝したし、納入者のフォローアップもゼネコンのサポートもあり、完璧。
良き時代のメンテナンス経験だったが、今はどこもぎりぎりの状態での受注、難しい時代といえる。


運営品質の変化、施設品質の劣化は、目に見えないところからホテル現場を浸食し、次第に形を表す
形が見えてきた時は手遅れ、それを元に戻すには、倍以上のコストと時間がかかることは明白。
小林社長が言っているような、暗黙値としての基本的な思想、これが共有できていないと、一般的な教育ではカバーできない

困難なことだが、意識を持つことを継続するしかない。


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