事業費vs事業成果?

今日から、中国人に対するビザ発給基準が緩和された。
『 VISIT JAPAN 』を推進する大きな力になるだろう。
ホテル業界でも、その対応が進んでいるが、マーケット特性を考慮した正しい対応が求められる。
これは、単に販売政策のみではなく、運営・施設面での対応も求められることは言うまでもない。


ところで、今日はホテル事業における初期投資・リノベーションに対する考え方について、少し考えてみることにしよう。

JWマリオット(LAX)で良い経験をした。
このブランドは、マリオットのなかでトップクラスに入る位置づけ。
勿論、マリオットには、リッツカールトン、ブルガリもあるが、それとはラインが異なる。
そのホテルのロビー、円柱状の太い柱が何本も立っている。
その柱、表面材料はもちろん大理石だよね?!
そう思って、石の厚みを推測するべく、指ではじいてみた。
カーンという乾いた音、なんと、フェイク材を使用していた。
良くできている、まるで大理石・・・ 
日本だったら、もっと下のクラスでも、当然の様に本物の石を使用する。
しかも、ホテルの玄関であるロビーでフェイク材を、と考える人は、ごく希だと思う。
客室内も、全体でうまくまとまっているけれど、例えば空調のガラリなどはそのままムキだし、木部は概ねペイント処理、といった様な仕上げ。
良くチェックしてみると、この様な箇所がホテル館内のあちこちに・・・
つまり、お金のかけ方が、日本と異なる。
この合理性、恐れ入りました・・・
外資系ブランドにこの傾向が強い。
ただし、自社事業ではない運営受委託ケース、自社にコストが発生せず、事業者が金をかけたがる場合、断る理由はない、喜んで受け入れる。


本物の素材、フェイク材、これの使い方によって、運営収支に影響が出てくるのであろうか?
否、だと思う。
たたいてみるのは業界人だけ、普通の人はそんなことしない!
これまで、日本ではややもすると素材感に拘りすぎるきらいがあった。
このことは、当然に投資コストアップの要因になる。
他の外資ブランド事例でも、え〜、あのブランドでここまで金をかけるの? と言える事例が東京・恵比寿にもあったが、これは、開発初期の事業者の思い入れが大きかったと推測している。
現在はシェラトンより上との位置付けだけど、計画当時は必ずしもそうではなかった。
本国での施設品質は、ばらつきはあるも、日本での設計品質レベルほど高くなかった。
これは、大阪の同ブランドの初期品質をみれば良くわかる。
当時は青木建設が同ブランドを所有しており、標準的な施設基準で大阪のホテルを建設した。


最近は趣向の変化が早く、業態も変わらなければならないケースが頻発する。
料飲施設での業態でいえば、5〜7年程度?
昨今のホテル内料飲施設の事業性低下は、マーケットニーズからの乖離であり、その対応遅れにある。

客室も同様。
昔は、1回作れば、概ね20年間程度、同一仕様でいくため、その間は更新しない家具類は頑丈な仕様でなければならない、とされていた。
リノベーションの基本的な考え方は次の様に言われていた。
・最初のリノベは、同一デザインで、カーペットの張り替え(6年目?)
・次は、デザインを一新するため、表面面積の大きいカーテン、カーペット類を取り替え・張り替え
 (12年目?)
・この間、ベッド・寝具類更新、椅子の布地張り替え等を損耗状態に応じて行う
 必要に応じて、カーペット類を更新
・20年間程度使用した後、全面更新する
 バスルームも併せて行うが、予算がなければ後回し
しかしながら、今は、これでは趣向の変化に対応できない。
多分、10年間程度でのデザイン一新が必要にあるであろう。
更に、バスルームは常に進化しており、リノベでの重要ポイントとなろう。
バスルームは、タワーマンションを含めたデザイーナーズマンションによって、劇的に進化しており、既存ホテルは置いていかれた・・・


本物素材を使っていれば、当然のこと、その年数では償却もできていないし、もったいないという気持ちが働いてしまう。
もちろん、素材感は日本人にとって大事な感性だと思う。
一方で、ホテル施設は収益施設であり、良い施設だけでは評価されない。
このバランスをどの様にとるかが知恵の出しどころ。


仕様設計か、性能設計か、で事業費の中で最大の「建設費」の削りしろが大きく異なる。
今後のホテル設計は、性能設計を前提として、ゼネコンからのVEを受け入れ易くし、建設費低減、リノベをし易くする方向へ持って行くべきであろう。


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