価格の設定

東京ドームの生ビール販売価格で感じた価格設定に刺激され、ホテルの価格を振り返ってみた。

客室の価格、ってどうやって決めている?
ホテル草創期、1960年代、御三家、パレスホテル、東京ヒルトンホテル等のリーディングホテルの他は、旧新橋第一ホテル、今は無い銀座第一ホテル等の多くの業務出張客が利用したホテル、が主たるホテルだった。
勿論、この他にもビジネス系、中型の都市型ホテル等のホテルは多々あった。
各々のホテルは、リーディングホテルの値決めに従い、自ホテルのポジションに合わせてアジャストしていたのだろうか?
地方のホテルも、それらに合わせた価格設定だったと思うが、都市名を冠したグランドホテルはそれなりに高額だった。
また、その売価に合わせたコスト構造が長く続いていたと思う。
企業の出張旅費規程は、第一ホテルクラスに合わせて設定されていた様に推測する。


しかしながら、バジェットホテルおよび宿泊特化型ホテルの出現、これらに伴う大量供給が、この価格秩序を破壊してしまった、と感じている。
バジェットホテル系の客室価格、どうしてあれだけ安くできるのだろうか??
バジェットホテルのはしりは、東横イン
これに、アパホテルスーパーホテル、ルートイン、等が続いて展開
・施設建築費、FF&E費をおさえる
・提供サービスが限定的
・固定費を抑えるために料飲施設等を設定しない
・人件費をおさえる
これらは明らかだが、それだけだろうか?


一般的な都市型ホテル、ラフに平均して、稼働1部屋当たりのランニングコスト、3、000円前後。
(最近は、人件費を切りつめ、もう少し下がっている、と思う)
地方では、激安のバジェットホテル、3、000円程度で出ている。
いくらコストが低いと言っても、1、500円/室、程度のランニングコストは必要だろう。
しかも、災害発生時の対応を考えると、要員を絞るといっても限度がある。

安全・安心・清潔、かつ各種法律および規則等の遵守は、宿泊施設の基本。
過剰設備・装飾は不要だが、最低ラインは必須。
これらの実現・維持コストを算定、基礎的なコストを確定する必要がある。


レストランの料理単価も同様
客単価2、000円程度の激安居酒屋が出現・増殖中
不必要にコストをかける必要はないし、仕入れコスト削減、ロス・ゼロ化等の努力は必要。
しかしながら、衛生コストを含め、品質維持のための基礎的コストはかかる。


最近、本業がコンサル(対象業界は、個人相手の商売?)が進出を検討する開発案件、そのための事前調査を行った。
その人は、うまくいく、という答えを期待していたのだろうが、残念ながらビジネスとしてみた場合、事業性無し、の物件だった。
調査業務、事実を事実として説明することであり、なにがなんでも良い、というものではない。
調査結果が不満だったのか知らないが.....
最後には、『顧客満足が基本』という、コンサルがよく使う専門用語で主張していた・・・・
工夫は可能だが経済的に合わない、と説明したのだが、OKが顧客満足なのだろうか、と邪推してしまう。
この例が示す様に、顧客は、実に様々。
そこが面白いところではなるが、ある意味では怖い部分でもある。


ホテルの現場でも、この様なトラブルは多発する。
トラブルの原因は、単なるミスは除き、多くは『高いお金を出しているのだから、なにがなんでも俺の言うことを聞け!』というものだろう。
しかしながら、意味のないことで頭を下げる必要はない。
『提示価格とサービス内容がバランスしていない、とトラブル発生』のケース、提供品質&価格設定に確たる裏付けがあれば、堂々と主張することも大事なこと。
そのためにも、自ホテルの価格設定は、横にらみ&情緒的なものではなく、経済合理性あるものにすることが必要


然り乍ら、、、、
小手先だけの経費削減は、とっくの昔に限界。
宿泊、料飲の何れも基礎的コストを、ゼロベースで積み上げ、再検討する必要がある。

これは、価格競争にうって出る、という単純なことではない。
自ホテルのポジショニングをしっかり見極め、そのなかで生き抜いていくため、
・コスト計算から算出される販売価格の限界値をしること
・具体的なコスト削減の対応策を講じること
・提供品質の適正コスト算定
の基礎情報となる。

地道にかつ真剣に検証すれば、生き残る道が必ず見つかる、と信じている。



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