立地環境、施設、販売計画との関係
以前にもブログに書いたが、改めて、実例で整理してみた。
営業不振のホテル、幾つか理由がある。
経済環境の変化(=需要の変化)に既存施設が耐え切れない、ミスマネジメントでの営業不振、運営組織の人的崩壊、等々ある。
しかしながら、周辺環境の変化、これが経済環境の変化にダブルで効いてくる場合もある。
この例を、開業して30年近く経過した、大阪・心斎橋に立地する都市型総合ホテルにとり、検証してみた。
同ホテル、開業後10年間位、売上・利益の坪効率日本一を自負した、と思う。
高額の賃料・共益費を支払っても、余剰キャッシュがたっぷりあった。
また、同ホテルチェーン、都市型ホテルの運営ノウハウを確立した功績大。
ホテル社員のロイヤリティ、極めて高かった。
当ホテル出身者、総支配人を含め幹部社員として、同ホテルチェーンのあちこちで活躍している。
異業種参入組の自分も、このホテルで、基礎的ノウハウを習得した。
当ホテル開業後、同等クラス、および上位クラスのホテル建設が続いた。
そのなかでも、御堂筋線「心斎橋駅」直結という交通利便性を生かし、独自のマーケティングで、高収益ホテルとして頑張っていた。
しかしがら、この高収益ホテル、バブル崩壊を機に下り坂。
収益減少対応へのミスマネジメントもあっただろうが、この30年間で、ホテルの立地環境が大きく変わったことに驚く。
現在の姿を予測できた人はいなかった、と考えるし、自分もそうだった。
状況を、ごく簡単に整理してみた。
業務系
ビジネス街、しかも1部上場企業の本支店が軒を連ねていた、御堂筋沿い、本町・淀屋橋〜長堀橋間
銀行統廃合による支店の統廃合、本社・本部組織の東京移転、等により、空洞化。
(大阪に残っている業務系、梅田地区へ集中、OBPも一翼を担っている。)
空き地での再開発が進み、業務以外用途のビルも立ち上がっている。
一歩奥に入ると、タワーマンションも多々。
商業系
御堂筋を隔てた「旧そごう」が建て替わり、またその後の身売りで「大丸」となった。
同店舗内には、新しいグルメ街(大型施設)も設置された。
「大丸」の大型2店舗がホテルの対面に並ぶこととなったが、顧客年齢層別品揃えは変化した。
老舗が軒を連ねた心斎橋筋商店街が衰退、販売単価の低い店舗に置き換わっている。
エンタメ系
これは、バブル崩壊の影響ではなく、ホテル開業後から継続して変身し続けた。
ホテル裏手が大きく変わり、アメリカ村を中心として、若年層が多く流入するエリア、となった。
心斎橋筋商店街の裏手の飲食系、最近は以前よりはまし、との声もあるが、呼び込みの激しい
エリアとなっている。
北新地、みなみとの格差が大きくなり、接待需要の行き来がなくなった。
みなみ地区には、予算を多く持つ企業の接待需要が無くなったのではないか??
これだけ周辺環境が変化すると、需要変化は確実に発生する。
ホテルのポジショニングが不変であるとすれば、マーケットとのミスマッチは当然のように発生する。
数年前、同ホテルの運営実績および賃貸借条件を基に、部門別(料飲は店舗別)賃料負担能力をラフに試算したことがある。
試算結果をみて、高級飲食店舗、付帯設備を多く持つ宴会部門の賃料負担力の無さに驚いた。
というより、不動産事業の見地からすれば、すぐにでも閉鎖、該当する床部分を返還するべき水準。
当然のことながら、同種施設、固定費が相対的に高い。
高客単価&高回転率が基本の施設、これが実現できない場合、部門利益は著しく低下、マイナスとなることも多々。
かつ、これらの高客単価・高回転率、ホテル立地環境により変化、単一ホテルの頑張りでは挽回することは著しく困難。
頑張れば高収益、失敗すればお荷物、非常にリスクの高い施設でもある。
このこと、当該ホテルに限らず、同タイプホテルに当てはまる。
同ホテルの客室構成、シングル/ツイン(ダブル含む)比率、42:58。
施設効率を求めるため、シングル、ツインがワンセットで同一スパンに収まる設計。
これは、事後の客室タイプ変更が難しい。
開業当初から、平日はシングルが不足、週末はツインが不足、という状況が続いていた。
ルームミックス、施設効率と販売計画とのせめぎあい、計画時の判断となり、開業後の運営スタッフにはどうすることもできない。
イールドマネジメントの限界はすぐ目の前にある。
域内におけるシングル客室の著しい供給増、周辺環境および需要構造の変化に耐えているのだろうか??
「掃き溜め(言い過ぎか?)に鶴」、この言葉、ホテル業界でも通用するのだろうか??