ノウハウを成文化する

NHK朝連ドラ『純と愛』、舞台となっている建物は「ANAクラウンプラザ大阪
(同ホテルのHPより転載)

もちろん、ホテル内施設の撮影は一部、それ以外はセットだろうが、知っている人には、それとわかる場面もある。
前職時代、大阪プロジェクトに参加したが、その後に開業したホテル。
大阪vs戦争、といわれていた。
大阪ではが先行したが、金沢では後攻め、北陸vs戦争、といわれた。
成田でも、A社の国際線進出に合わせて、A社のホテルが開業した。
関空では同時期開業。
航空会社が各々ホテル会社を持ち、空だけではなく、陸でも覇を競っていた時代が懐かしい。。。



ところで、、、、
最近、機会があり、チェーンホテルにおける各種基準書の見直し作業をしている。
元来、国内ホテルでは、仮に複数のホテル展開をしていても、基準となる指針を成文化したホテル会社はほとんどなかった。
ホテル計画・開業準備期間中、基幹ホテルがあればそれを基本として、多数の社内関係者が長い期間、密に摺合せ、合意形成のもとに進めてきたことがその理由か
プロジェクト責任者が、「俺が基準だ、決める。」という場合もあったことだろう。
結果として、プロジェクト責任者・幹部の好み、業務背景により、ばらつきのある施設、運営手法となっていたことは否めない。
企画開発業務の専門家も少なくなり、かつホテルプレーヤーの顔ぶれも変わったため、この基準書の重要性は増している
もちろん、部門別の業務処理マニュアルはあっただろうが、業務処理マニュアルと基準とは根本的にその立ち位置が異なる
また、この違いを認識していないケースも多い。


提供するホテル品質をブランドが表すことになるが、この約束事がブランド基準となる。
このため、各ブランドは、施設品質、運営品質、サービス品質というホテルの核となる要素に、各々の思いを込めた基準を設定、遵守するべく日々努力している。
ブランド基準は、この様に、重要な役割を担っている。



施設基準は、ホテル設計経験の豊富な設計事務所の協力を得ることにより、比較的つくりやすい。
ただし、自社ブランドのマーケットポジションを忘れてはならない。


運営品質・サービス品質基準は、自社ホテルのマーケットポジションが定まっていないと、実態とかけ離れたものになることがある。
リゾートホテルは、利用目的が相対的に明快、また、施設品質、立地環境に対する顧客評価シェアが高いこともあり、ポジションさえ間違えなけば、それ程難しくない。
ただし、基準を実現するハードル、これは逆に高い
しかしながら、都市型ホテル、宿泊特化型ホテルにおけるそれは難しい、と感じる。


業務処理基準(主として、経理・調達倉庫管理・コンプライアンス関係)は、設定し易い様だが、そうでもない。
業務処理マニュアルと混同しがちな分野、また基準作成の担当者の業務経験に拠るところ大、バランスをとる必要がある。


業務処理マニュアルについても同様。
各種基準書の下に位置する業務処理マニュアル、手作業時代からPMSの本格導入により、大きく改訂されている。
このため、業務処理マニュアル、ある意味、PMS操作マニュアルになっている場合が多い
一方、手作業時代を知らない層が、既に各ホテル組織の責任者クラスになっている。
このため、手作業時代には、何段階にも分けてチェックポイントがあり、間違い修正、不正防止が図られていたことを知らないことも多々ある。
つまり、PMS、『入力=データ処理、出力』、意識しないとチェック無しか、甘くなる


人件費削減の一環により、マルチジョブが当然のこととなっている現在、相互牽制が効かなくなるケースも発生する。
PMS導入による新たなチェックポイントの設定兼務する職種を制限、あるいは新たなチェックポイントを設ける、これらは業務品質を規定する基準書による。
この辺り、チェーンホテルとしてのノウハウの肝、となる。



自社でホテル経営&運営をしている場合、運営結果リスクは自社がとることとなるため、少なくとも外部関係者への影響はない。
一方、ホテルの運営専門家として、他者からホテルの運営を業務受託する際に締結する標準的な運営管理業務受委託契約の意味するもの、実質は「運営受託=経営受託」となっている。
つまり、運営の専門家として、運営受託する場合、その結果リスクは委託者が負うこととなるため、運営受託者としての責任は重い。
この契約締結の際、受委託双方で確認するものが受託者側が規定する各種基準書、少なくとも業務処理マニュアルではない。
Win Winの関係となるべき受委託者にとり、その拠り所となるものでもある。



この業界に入った前職当初、社内に、運営のシステム化(=標準化、明文化、見える化)を標榜し、その普及に尽力している先輩がいた。
昔の資料確認をしている時、その先輩の肉筆による「FBCの導入」稟議書COPYを発見。
これは、大阪プロジェクト・社内で初めての「館内オンラインシステム」を構築する際の参考資料として、J先輩から譲り受けたものだった。
コンピュータ導入により、大容量データを処理、即日レポートを作成、今読んでも、実によく書かれていたし、システム化に大いに貢献した。
また、ある時期、各種基準・業務処理マニュアルの標準化を標榜、役員配置の専門本部を立ち上げ、各種基準等を整備していた。
これらの成果を手に、プロジェクト営業活動をしていたが、顧客の納得感を得ることのできるものだった。



経験を活かし、より良い基準書を作成すべく、ねじりハチマキ状態で越年か。。。。



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