ホテルの会計って?

大学を卒業して最初に就職した会社は、ホテルとは無縁の会社だった。
その会社に2年半在籍した後、どういう訳かホテル会社へ転職・・・


最初に配属されたのは、ホテルの現場で経理セクション。
フロント、レストランとキャッシャー研修を1週間行い、売掛金管理の担当になった。
で、1000円未満のレストラン利用までツケにしていく人がいるのに驚いた。
しかも、月末に丁寧な請求書を作成し、郵送。
「これって、絶対利益食っているよな?!」と思いながらも作業。
前職では、1件あたり100万円未満は、十把一絡げの背番号管理だったのに・・・


更に、会計の専門用語はほとんど英語。
勘定科目も英語が基本・・・
日本の会社なのに、何で英語なんだ??
大学での専攻は会計監査論だったし、簿記だって日商1級、自信があったけれど、これに少々とまどいを感じた。
現在は経理だって英語は当たり前だけど、30年余り前の経理は裏方の代表選手、もちろん日本語オンリーで地味なセクションだった。


例えば、『Debit』=借方、『Credit』=貸方はすぐわかる。
でも、今だったら、デビットと言われればデビットカード?? なんて思うかもしれないけれど、その頃はなかった。
『D. Card』=フロントの日計表、『Earning Journal』=売上集計表、『Debit/Credit Memo』=振替伝票、 『General Cashier`s Report』=現金入金仕訳表、etc. ひとつひとつ指さしで内容確認!
業務へのコンピュータ導入は一部では進んでいたけれど、経理部門ではまだ概ね手作業。
手作業で作成する集計表と集計表をつなぐワークシートが多々あり、これらのタイトルもほとんどが英語。


入社して間もない頃、『D. Card』で使われている『Net Outstanding』の意味を教えよう、とJ先輩の言葉。
会計事務所出身で途中入社の同僚と、ホテルのスィートルームへ。
J先輩は2時間程度のカリキュラムを組んでいた。
が、これはこちらの勝ち!!
『Net Outstanding』=滞在客未収勘定=売掛金のひとつだ。
ホテルの経理は1日単位、日付変更線で日計表をしめることが原則。
つまり、滞在中のお客様に対して深夜・午前0時に売掛金が発生する仕組み。
すぐわかるじゃん、と5分程度でセッションは終了。
もっとスィートルームを楽しみたかったのに・・・・
J先輩はがっかりしながらも、なんとなく嬉しそうだった。


ホテル会計にユニフォームシステムを採用し、これも全部英語・・・
現在ではホテル所有者に多くの外資系ファンドが参入しているためか常識化しているけれど、当時の日系のホテルチェーンでは少なかった。

当時、ホテル子会社のある社長が「日本の会社なのに、なんで全部英語なのだ?!」と怒っている、と聞いたけれど、その気持に大きく頷いたことを覚えている。
入社時、海外に3ホテルしかなかったと思うし、自分には縁が無いと勝手に考えていた。
現在の様に、多くの外資系チェーンが参入、事業主も外資外資・・・という時代が来るとは夢にも考えなかった。 
『旧々(?)ホテル御三家』時代が妙に懐かしい。


あの頃、もっと真面目に英語を勉強していれば、いや、海外のホテルへの転勤話が実現していれば、今の苦労はなかっただろうに・・・
いや、海外に行っていれば、企画開発部署での連続24年間勤務は無かったか・・・・
どっちが良かったのだろう????

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