Rev.PARの読み解き

Rev.PARという言葉・概念、イールドマネジメントの普及により広まった。
Revenue par Available Room の略、販売可能客室1室あたりの売上、の意味。
各ホテルとの横断比較数値としてみると、価値のある数値だと考えるが、一方では、誤解に基づく読み方も広がっている、と感じる
当然のことながら、高ければ高いほど良い。

このため、多くのホテル、「 予算Rev.PAR を実現&あげろ」、という指示が出ている様だ。
それはそれで意味のある指示だが、販売価格低下が続いている今、その方法は??
特に、ブランドコンセプトに基づく販売戦略が確立していないホテルにその傾向が顕著だと感じる。


Rev.PAR、単純計算式でいうと、『 客室稼働率×平均客室単価 』で算出される数値
この算式は、販売戦略を読み解く場合に極めて重要。
客室稼働率勝負? 客室単価勝負?? 共に上がることが理想であろうが、現実はそれほど簡単なことではない。
ホテルの客室販売、様々な販売手法がある。
ブランド毎に、ねらうマーケットポジションに対する販売戦略が異なるし、それがブランドの違いとなる(はず)。


具体的な例:
予算Rev.PAR=9,600円と設定してみた。
その実現にはいくつものパターンがあるが、次の例が分かり易い。
基 準 値:客室稼働率=75% 平均客室単価=12,800円
    (基準値は存在しないが、分かり易くするために設定)
単価勝負:客室稼働率=60% 平均客室単価=16,000円 
稼働勝負:客室稼働率=80% 平均客室単価=12,000円
更に勝負:客室稼働率=85% 平均客室単価≒11,295円
つまり、同じRev.PARを実現するにしても、価格を下げ稼働を上げることにより、設定Rev.PARを確保することが可能。
あるいは、稼働率に走らず、単価勝負で実現することも可能。
現実はこれほど極端ではないが、よくみるとホテルにより、その内容は微妙に異なっている。
また、ここでいう平均客室単価、他ホテルと横断比較をする場合、そのホテルのルームミックス、ダブルオキュパンシーの違いを考慮しないと読み違えることに注意
結果としての滞在人数、これは朝食利用等のホテル飲食施設の営業に効いてくる。
リゾート施設では、更に飲食施設全体に効いてくる。
客室販売単体でのイールドマネジメントのみで判断すると、施設全体の事業性確保という観点から間違ってしまうことにも注意


結果OKであればどの手法でもよし、と思う人いるが、これがくせ者。
以前のブログ、客室価格=価格負担能力=マーケットポジション、と簡単に整理してみた。
提示価格を下げると、顧客層に変化が生じる。
乱暴に言うと、静かなホテルが妙に荒くにぎやかになる、という状態、これが良いか悪いか、がひとつの評価ポイント。
また、客室稼働が高くなる、ということは、ホテル内全てのスタッフに負担がかかることに加え、消耗品原価総額アップ、清掃業務量アップ、等々、販売価格にかかわらず原価・経費増の要因となる。
更に、多客化により、施設も傷む。
これは、短期には顕在化しないが、それなりの状況下においては確実に効いてくる。
相当に困難な状況ではあるが、客室単価向上に力点を置くことが基本だろう。


昨晩、食事をした某市におけるトップホテル、そのイールドマネジメント責任者。
客室販売価格を下げても予算Rev.PARを実現せよ、との至上命令に悩んでいた。
ホテル市場も他業種同様、未だデフレ状態が続いている。
また、多くの新興宿泊特化型ホテルが、稼働重視で値下げ、その影響も受けている、とのこと。
彼は、いったん下げた価格、その後の市場好転時での対応、また顧客層が微妙に変化することを理解しているが故の葛藤。
しかも、販売戦略は、ブランドコンセプトに基づく継続的な判断によるものであることは明らかであり、年替わりで変更するものではない。
何とか応援してあげたい・・・・


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